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逗子のかばん専門店「おしゃれの店つるや」閉店へ 商店街と歩んだ100年

9月30日に閉店となる「おしゃれの店 つるや」には値引きの案内も

9月30日に閉店となる「おしゃれの店 つるや」には値引きの案内も

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 逗子銀座商店街のほど中で約100年にわたり店舗を構えたかばん専門店「おしゃれの店 つるや」(逗子市逗子6、TEL 046-873-8484)が9月30日、閉店する。

(左から)画家の絵を取り入れ、全国の百貨店などでも販売されたバッグを持つ店主、渡辺高男さん、妻、静江さん、長男、勝則さん

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 1925(大正14)年、糸やボタン、下着などの衣料品を扱う店として、渡辺静江さんの父、太七さんが創業。国が発行する配給切符で商品を売った時代もあった。

 昭和30年代、渡辺高男さんが見合い結婚後、店を継ぐようになってからは手芸品・アクセサリーなども扱い、店の一角では化粧品(カネボウ)を置き、専門のスタッフも配置した。逗子が避暑地としてにぎわい、海岸が多くの海水浴客であふれた時代で、店員も4~5人いたという。
 高度成長期、働き手は「金の卵」というほど貴重になり、手芸品など細々した商品は手間もかかるので、ハンドバッグやかばんの専門店に変えた。海外旅行も増えるだろうとスーツケースも置いた。

 横浜で大きな農家を営む高男さんの実家は、大物政治家が立ち寄ることもあり、「学生の頃、家の太い大黒柱に隠れて、これからは経済がどんどん良くなると話しているのを聞いていたこともあって、物が売れると思っていた」と振り返る。「養子で商店街に来たが、よそ者ということで嫌な思いはしたことがなく、皆さん、かわいがってくれた。都内の浅草橋や蔵前まで仕入れに行き、たくさんのかばんを風呂敷にまとめて背負い、両手に抱えて逗子駅に戻ってくると、駅員が『ここに置いて自転車取って来い』と声を掛けてくれた」と懐かしむ。

 静江さんの父親は、スーパースズキヤ(逗子市)を創業した鈴木道雄さんの兄弟。鈴木家とも交流があり、アドバイスもいろいろもらったという高男さんは、道雄さんの妻、ルリ子さんから「お客さんが安心して買えるいいものを扱いなさい」と言われた言葉を忘れない。店を閉じる理由の一つは「腕のいい職人が減っていき、いいものを作れるメーカーがなくなっていったこと。ハンドバッグならハセガワ、男物なら松崎という確かな良品を仕入れ、喜んでいただいていた」と嘆く。

 市立逗子中学校の頃から陸上部で、スポーツが好き、体力には自信があったという静江さんは「70歳になったときは、店を閉めるなんて考えてもいなかった」と言い、84歳の今も毎日、店に立つ。「体調が悪くなって店を閉めるのではと心配してくださる人もいるがそうではない」と笑う。

 30代の頃、商店街のアーケード設置にも尽力した高男さんは「時代の流れは仕方ないが、専門店が減っていき、残念。店を閉めることになって申し訳ない。約60年、よく働かせてもらった、ありがたい」と話し、思い出話は続いた。

 半額セールになり品物は減っているが、かばんのほか、ショッピングキャリーや財布など小物も並ぶ。

 営業時間は9時30分~19時。30日まで休まず営業。

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