逗子の市民団体「原風景を生かすまちづくりの会」が12月5日、シンポジウム「原風景と逗子の歴史的建物の現状」を黒門カルチャークラブ(逗子市新宿)で行った。
原風景を生かすまちづくりの会会長で神奈川県登録有形文化財建造物所有者の会メンバーの長島孝一さん
神奈川県と湘南地域の各団体が取り組む「湘南邸園文化祭」の参加企画として開催した同シンポジウム。この日は、「かながわヘリテージマネージャー協会」による逗子の歴史的建造物の調査報告に注目が集まった。
調査1回目は2000(平成12)年に行われた。同協会会長の加部佳治さんは「1999(平成13)年に長島孝一邸が登録有形文化財に認定された際、同様に申請できそうな建物が逗子に90件あったが、20年経っても2件しか認定されていない。ほかの88件はどうなっているのかということで協会として昨年、『逗子プロジェクト』として調査を始めた」と話す。
全88件のリストで外観を目視できた75件のうち、46件が現存、29件が消滅しており、新たに29件の歴史的建物を確認することができたという。ヘリテージマネージャーが特定する歴史的建物は、「土地の歴史的景観に寄与しているもの、造形の規範となっているもの、再現することが容易ではないもののどれかに当たる建物で、その土地の『まちなみ』を構成する大切な資源」と加部さんは説明する。「逗子の歴史的建物の特徴はエリアごとに多少異なるが、開放的で背景にある山の緑と親和性がある」とも。
シンポジウムには、1932(昭和7)年に祖父母が建てた家を登録有形文化財として申請を進めているという建物の所有者も参加し、GHQに接収されたことや企業が夏の別荘として借りていたことなどを建物の特徴とともに紹介した。参加者は「逗子の歴史を知る上でも建物が残ることの意味は大きい。地域のためにも登録有形文化財への申請はうれしい」と話す。
閉鎖された逗子市郷土資料館(旧徳川家16代家達別荘)の保存を求めているという市民の一人は「長島邸と同時期に登録有形文化財認定相当と言われていたまま、閉鎖になり残念に思っている。ヘリテージマネージャー協会の皆さんにももう一度調査していただきたい」と話す。
原風景を生かすまちづくりの会会長で神奈川県登録有形文化財建造物所有者の会メンバーの長島孝一さんは「原風景の要素に関わる歴史的建物の調査内容と、有形文化財2件の具体的な登録の道筋が見えてきていることに未来へ向けた行動の力強さを感じた」とまとめた。