逗子海岸の磯場で2019年7月と9月に駆除したムラサキウニが葉山の石井牧場の堆肥場(横須賀市)で堆肥となり、2月下旬から葉山や逗子の畑に運ばれ、土作りに活用されている。
ウニの駆除は磯焼け対策の一つの方法として、地元サーファーや海岸で活動する団体の仲間が小坪漁業協同組合と協力して行った。7月は約2万1000個で950キロ、9月は約4000個で200キロのウニを捕獲した。身を出して殻をつぶし、トラックで堆肥場へ運んだ。
堆肥作りを引き受けた、葉山牛肥育農家「石井牧場」の石井裕一さんは「私も初めての作業だったが、まずウニの塩分を除去しないといけないので、紫色の川になるくらい真水で相当洗った」と話す。塩分除去の後は牛舎の堆肥同様、牛ふんと自家製の米ぬかを加えて発酵を繰り返した。「昨年末にはにおいもなくなり、温度も下がり完成に近づいていた」と振り返る。
地元漁師によると、除去されるウニは実入りが悪く、海中でつぶされることも多いという。殻は沿海地域の畑で有機肥料として使われていたという記録もあるが、腐敗臭が強く衛生面や環境面の問題から、三浦半島では現在ほぼ使われていないという。
石井さんは「いろいろ調べると、カルシウムやマグネシウムの含有量が多く、堆肥というより有機性肥料といえる。うまく循環できれば、ウニ堆肥で作ったキャベツを与えてウニ養殖までできるのでは」と期待を寄せる。
漁師や海岸の仲間と石井牧場を結び付け、同取り組みをサポートしている神奈川県議会議員の近藤だいすけさんは2003(平成15)年から葉山で畑を開墾し農業に取り組んでいる。「葉山独特のはねっこの土を農業利用しやすい土に変える取り組みにもなっている」と近藤さん。この日は畑作業を任されている小倉直道さんと400キロ分のウニ堆肥を畑に運んで土壌を耕した。土の表面に見られるウニの殻も手でつぶすと粉々になる。「この土で作ったジャガイモなどの野菜は逗子市内のダイニングバーで食材に使う。海と畑と町と資源が循環していくこともまちづくり」と近藤さん。ウニ駆除は今後も継続して行う予定という。