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福島県相馬で震災にあった写真家が逗子で個展 逗子海岸に通い続けて撮影した写真も

写真家の鴫原薫さん

写真家の鴫原薫さん

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 写真家の鴫原薫さんが3月5日から、zushi art gallery(逗子市逗子5)で個展「今日も生きているということ。」を開催する。

仙台の岩沼海岸で撮った写真で案内ハガキ

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 鴫原さんは中学2年生の時、東日本大震災で、福島県相馬市の実家の基礎が全壊し、宮城県に家族と共に移住。父親が趣味で使っていたデジタルカメラをもらい、一度だけ被災したがれきの海岸を撮る。「仙台の高専を卒業後、あこがれの写真家を目指して大阪の写真専門学校へ入った。被災したことは私にとって忘れられないことだが、その被災地の写真を私が撮っても見た人をいい気持ちにさせることはできない。見た人がポジティブな気持ちになれるような写真を撮りたいと思った」と鴫原さん。

 2017(平成29)年、中学生の頃から好きだった伊集院静の小説「なぎさホテル」にあこがれて、ホテルのあった逗子を訪れる。「ホテルは壊され、ファミリーレストランになっていたが、聖地に来たという感じだった」という鴫原さんはその後、ホテルが面していた海岸に足しげく通い、海の撮影を続ける。昨年も一昨年も3月11日は逗子海岸を撮影した。「福島に行かなくても海はつながっている。有休を取って海の写真を撮ることが私には大切だった。今年は個展の会期中にこうして逗子で3月11日を迎えられてうれしい」と話す。

 約2年、個展のために、所属するプリントディレクションサービス「FLATLABO」でプリント・額装し準備してきた。逗子海岸で撮り下ろした作品など約20点が並ぶ。

 「震災後、母がよく口にするようになった『生きてればそれでいいから』という言葉を、海を眺めながらかみしめてきた。自分自身で選択する人生の分岐と、自然災害など自分の力ではどうすることもできない分岐がある。その分岐をテーマに撮りためてきた。ご覧になった方がポジティブな気持ちに切り替えるきっかけになれば」と鴫原さん。会期中は有休を取って在廊する。

 同ギャラリー・オーナーの徳富直子さんは「このギャラリーは震災の年にオープンとなり、今年はこの10年の思いを込めた企画展を考えていた。鴫原さんの個展はそのスタート。作品は彼の心象が写っているよう。プリントがきれいで色が美しい。実物を見てもらいたい」と呼び掛ける。

 開催時間は11時~18時。入場無料。3月14日まで。

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