葉山町出身で詩人の新倉俊一さんが8月23日、老衰のため逗子市の自宅で亡くなった。明治学院大名誉教授、英米文学研究者。
明治学院大名誉教授、英米文学研究者、詩人の新倉俊一さん(提供=新倉勢子さん)
亡くなる1カ月前の7月25日、詩集「ビザンチュームへの旅」(洪水企画)を出版した新倉さんは1930(昭和5)年葉山のガラス店に次男として生まれた。葉山小学校、横須賀中学校(現・横須賀高等学校)出身。逗子へは結婚後の昭和40年代に移住。2018(平成30)年に出版した詩集「ウナ ジョルナータ」は2017(平成29)年まで逗子の池田通りにあったイタリア料理店の店名という。
「ビザンチュームへの旅」に掲載されたエッセイにもあるように、新倉さんは1957(昭和32)年、フルブライト留学生として氷川丸で米国留学。詩の世界に大きく人生のかじを取る。米国の詩人エズラ・パウンドの翻訳などから始まり、英米文学者で詩人、ノーベル文学賞の候補にもなった西脇順三郎に師事し、「評伝 西脇順三郎」では和辻哲郎文化賞、山本健吉文学賞受賞。2017(平成29)年には英文学の研究に尽力したことが認められ、神奈川文化賞受賞。共に受賞した女優・樹木希林さんを「達人」というタイトルで詩に詠んでいる。
詩作の一方、明治学院大学の教壇にも立ち、当時、出会った妻・勢子さんは新倉さんを「長身で目立っていた」と振り返る。
勢子さんは「葉山の海が好きだった新倉は今年、病気が分かり、どうしてもこの詩集を出版したいと3カ月間こもって執筆した。生前、出版できた詩集の感想が届くと、うれしそうに読んでいた。静かな人だった」と故人をしのんだ。
詩集「ビザンチュームへの旅」はA5判64ページ。価格は1,760円。