逗子の小坪漁港で陸上養殖してきたムラサキウニ「キャベツウニ」が6月28日29日、地元のスーパーマーケットや飲食店に向け出荷された。
小坪漁業協同組合(逗子市)と合同会社こつぼ(同)が昨年から取り組み、2年目となる「キャベツウニ」。昨年は、1トン級のたるなどを水槽として5つ設置し、沿岸で採ったムラサキウニ約1300個の養殖を行い、スーパーマーケットの店頭販売のみとした。今年は、より多くの地域住民に味わってほしいとたる2槽のほかにコンクリート水槽5つを新たに設け、4月16日、4000個で養殖を始めた。
ムラサキウニは海水温が25℃を過ぎると産卵し、出荷できなくなる。今年は出荷予定日の3日前から25℃になり、毎日世話をして記録を付けてきた座間太一さんと益子和男さんは「好天が続き、ヒヤヒヤしていた。今週と来週で2度の出荷を予定していたが、できるだけ今週中に出荷する」という。
出荷当日は、昨年に続きウニを店頭で販売するスーパーマーケット「スズキヤ」(同)の社員や漁師、関係者が殻をむき、出荷作業に当たった。出荷できるウニは全体の7割から8割。身入りは7パーセント程だった。
地域の飲食店では14店舗がウニを予約し、受け取りに来た。水槽からウニをどのようにしてトングで集めるか、どんなウニが元気そうかなどを益子さんらに聞きながら、店主自らが選んで買い求め、持ち帰って殻を割り、試食し、提供した。居酒屋「つく志」の店主、藤枝浩司さんは「大きいウニは見栄えがいい。身入りはほどほどの大きさの方が良かった。お試しなので、刺身盛り合わせに添えて提供したが、珍しいと喜んでもらえた。味はしっかりしている」と話す。
取り組みを当初からサポートしてきた神奈川県水産技術センター(三浦市三崎)企画指導部主任研究員の臼井一茂さんは「取り組みは2年目だが、水槽を新しくし、ウニの数も約2倍にしたことで、まんべんなくキャベツを食べさせる工夫などは初めての試みともいえる。使える道具をいかに利用し、資源をどう生かしていくかが今後の課題」と話す。来年は開始時期を早め、エサや水量を改善するという。
29日夕方には逗子市広報大使の石原良純さんが駆け付けた。何度かテレビ番組の取材で訪れて見守ってきたキャベツウニの出荷の状況を確認し、「いい味している。来年も楽しみ」と関係者をねぎらった。
飲食店での提供は28日と29日の両日限りになった。スーパーマーケット「スズキヤ駅前店」での店頭販売も海水温により30日以降は未定。