関東大震災による三浦半島の被災状況などを調査研究し、継承活動をしている逗子の市民グループ「ジオ神奈川」(逗子市沼間2)が「絵本『ずし小坪の関東大震災 109歳の証言』出版報告会」を4月29日に逗子市民交流センターで開催する。。
絵本「ずし小坪の関東大震災 109歳の証言」の表紙とフジさんが描かれたページ、出版報告会の案内
絵本に登場する7人兄弟の長女・高嶋フジさんは小坪小学校6年生の9月1日、学校から帰宅し、2歳の末弟に昼食を食べさせている時に震災に遭った。当時、腸チフスがはやり、次男と次女は逗子市内の病院に入院し、父が付き添い、長男は店を切り盛りしていたという。母親は7月に病死したばかりで、三女と三男は鎌倉・極楽寺にある母の実家に預けられていた。
フジさんに抱えられて逃げた末弟の息子・平井光義さんは「叔母は1941(昭和16)年に逗子から鎌倉に疎開し、結婚して都内で暮らし、80歳ころから横須賀の私の家の近くに住むようになった。震災の時の話はよく聞いている。93歳の時には逗子小学校で子どもたちに話をしたこともあり、そのことをソフトボールチーム仲間に伝えたところ、その方の奥さん・高橋光代さんから蟹江さんをつないでもらった。それがこの絵本ができるきっかけ」と話す。
「ジオ神奈川」代表の蟹江康光さん由紀さん夫妻は2003(平成15)年に「逗子市史」の口絵に画家・近藤紫雲による版画「震後津浪襲来-逗子小坪所見」を見つける。由紀さんは「ともかく小坪を歩いた。旧商家『山田屋』の先代が書き残した震災当時の日記など多くの資料を検証した。2018年にフジさんを紹介していただき、7回にわたり話を聞けたことで、版画や資料が忠実に描かれていたことを確認できた」と経緯を話し、「これは次世代をはじめ、多くの人に知ってもらいたいと思い絵本という形にした」と続ける。
平井さんも蟹江さんたちから版画を見せられ、「山に逃げる人たちの中に叔母や父がいるのではと思った。身に着けているチャンチャンコなども話の通り」と目を凝らしたという。
康光さんは「浜に逃げたフジさんたちに高台に走れと言ったのは漁師だった。津波がくることが伝承されていたと考えられる。そのことを忘れてはいけない。私たちは地質なども広く研究し、聞き取りしているので論文のような内容でもあるが、絵本作成は伝えていくという思いを込めている」と話す。
報告会の開催時間は14時~16時。参加費は500円(別途資料代500円)。予約が必要(定員23人・先着順)。希望者は「ジオ神奈川」のホームページから連絡。
絵本の価格は1,000円。5月1日から逗子郵便局前「こだわりの道具と雑貨の店 紡氣(つむぎ)」で数量限定販売する。