葉山のアイスクリーム類製造業「BEAT ICE」が棚田の米で作る「棚田アイス」の取り組みが昨年12月、第8回環境省グッドライフアワード「実行委員会特別賞/森里川海賞」を受賞した。1月16日、同社社長の山口冴希さんが夫と共に葉山町役場を訪れ、山梨崇仁町長に報告した。
グッドライフアワードは環境に優しい社会の実現を目指し、日本各地で実践されている活動や取り組みを環境省が主体となって募集して紹介、表彰し、活動や社会を活性化するための情報交換などを支援していくプロジェクト。
「棚田アイス」は2015(平成27)年、都内から家族5人で移住し、上山口地区の棚田で米作りの援農ボランティアに参加するようになった山口さん夫婦が「棚田から笑顔、喜びが生まれるにはどうすればいいだろう」という思いから2018(平成30)年4月に「葉山アイス」として販売を始めた。アイス1つ当たり10円が葉山の棚田(上山口)での活動費に還元される。現在、この取り組みが高知県嶺北や長野県千曲市にある姨捨、徳島県上勝町でなど全国6地域の棚田に広がっている。
「葉山アイス」の定番商品は、棚田の米で甘酒を仕込み、ココナツミルクを合わせて作った「甘酒&ココナッツミルク味」と、葉山の名産であるショウガとスパイス、アーモンドミルクを合わせて作った「アーモンドミルクチャイ味」の2種類。卵や乳製品は一切使っていない。
冴希さんは「夫の思い付きでアイス作りを始めたが、家の炊飯器で甘酒を作るところから初めて、何度も何度も試作を重ね、商品化まで約1年かかった」と振り返る。2019(平成30)年にはクラウドファウンディングを行い、アイスクリーム製造工房を完成させた。
「葉山といえば海を思い浮かべる人が多く、立地的にも孤立している棚田だが、アイスを海の家で販売することで、海と山をつなぐこともできると考えた。江戸時代から続いているといわれる貴重な稲作文化も伝えたいし、地域の人たちが喜んでもらえるような取り組みとして続けていきたい。アイスクリームは大人にも子どもにも味わってもらえる」と山口さん。「今後は棚田のあぜに植える、たのくろ豆と呼ばれる葉山の在来種の種で育てている大豆も利用してみたい。全国の他地域の棚田との連携も広げていく」とも。
報告を受けた山梨町長は「以前からお2人のハーモニーがとてもいいと感じている。夫婦で農家の皆さんの仲間に加わっていったことが良かったのでは。地域を大切にする2人の思いをこれからも大事に」と受賞をたたえた。
「葉山アイス」はBEAT ICEのホームページとスーパースズキヤ駅前店(逗子市逗子1)やショッピングプラザ「葉山ステーション」(葉山町長柄)で販売している。