逗子出身・在住の元教師、田中定幸さんが代表を務める「国分一太郎『教育』と『文学』研究会」編集の「子どもたちへ 国分一太郎童謡集」(北の風出版)が10月1日に発行され、書店「椿書房」(逗子市逗子7)でも11月末から販売している。
(左から)「君ひとの子の師であれば」復刻版(新評論)、「子どもたちへ 国分一太郎童謡集」、「作文名人への道」(田中定幸・今井成司・榎本 豊 編著、本の泉社)
山形県東根市出身の児童文学者であり、教師であった国分一太郎は「想画教育」と出合い、生活教育・生活綴(つづ)り方の指導に力を入れる。児童文芸雑誌「赤い鳥」には生活綴り方について、素朴にありのままに子どもが直接体験した生活を自分の言葉でつづることとある。田中さんによれば1951(昭和26)年出版の「君ひとの子の師であれば」(東洋書館)は、教師のバイブルとして読み継がれてきたという。
田中さんは30代で入会した「日本作文の会」(東京都文京区)で国分と出会い、約10年、毎月1回「綴方理論研究会」で国分から学ぶ。逗子の自宅にも遊びに来たという。山形弁が残る国分は「私はクルミのように無愛想だが、気軽に話し掛けてほしい」と声を掛けるような人柄で、「教育の基本の在り方をはじめ多くのことを教えられた」と田中さんは振り返る。
「東根にある国分先生の資料展示室が2019年にリニューアルした際に伺い、資料収蔵室で背表紙に『童謡 習作』と書かれた先生のノートを見つけた。1932(昭和7)年から1933(昭和8)年にかけての作品で、すでに発表されているもの、曲が付いているものを含めて258編のほか、覚書や題材のメモなどが書き残されていた。白紙に一つ一つの作品を固着させ整理しながら、先生が生涯の中の一時期、なぜ童謡創作に力を注いだかの考察などを加えた」と田中さん。
同書は、国分の童謡を全て収録し、グラビアには直筆原稿や色紙、昭初期の子どもたちの生活が分かる「想画」、童謡に付けられた楽譜も掲載されている。装丁の絵も国分の描いたもの。
田中さんは「第1部の童謡作品は、この冬休みにでも家族で読んでもらいたい。今年はコロナ禍の中で子どもとの触れ合い方をあらためて考える教師、親が多かったと思う。生活を映し出す国分先生の作品は育て方のヒントにもなる」と話す。
同書はA5判、248ページ。価格は1,600円(税別)