葉山在住の砂絵作家、宮地淳子さんが10月9日、徳間書店から出版された書籍「黒白の起点」(著=梓林太郎)の表紙を初めて担当した。
砂絵作家の宮地淳子さん。手にする作品は本「黒白の起点」の表紙候補として描いたもう1枚
きっかけは、宮地さんの母が教える茶道の弟子の夫。砂絵に興味を持ち、受賞歴に関心し、勤めていた徳間書店の後輩に紹介した。文芸書の担当者が宮地さんの工房に来て、「砂絵というものを知らなかった。今まで砂絵を表紙にしたことはない」と気に入られ、話が進んだという。
宮地さんが砂絵と出合ったのは、小学生の時。「当時、茅ケ崎に住んでいて、お祭りか何かで砂絵セットが270円で売っていた。こんな面白そうなものがあるんだとお金を家に取りに行っている間にいなくなってしまって。そのまま頭の隅に残った」と振り返る。
金工作家の父が家で行うデッサンをまねていた宮地さんは美術の道を目指し、玉川大学に入学、金工を学ぶ。「金工は勉強したが、子どもを連れて出掛けた先で砂絵に再会し、今なら始められると思い、砂絵に合う砂を見つけることから取り組んだ」と話す。「2年位前に、砂絵作家を探したという編集者に『日本では3人、関東圏では宮地さんしかいないと思う』と言われた。使う人がいないので砂絵用の砂もない。色の乗り具合や耐久性、耐光性なども果てしなく試しながら使っている」とも。色も7色からスタートし今は約80色。
2008(平成20)年、「全美術展東京新聞社賞」以来、2009(平成21)年、「日仏国際現代美術展奨励賞」などの受賞が続き、欧州美術倶楽部、ドイツ・シャルロッテンブルク宮殿アートフェスなど、海外でも注目された。「2014年のロス展に参加した後は出展することに少し疲れてしまって、それ以降は地域のイベントに参加して砂絵作りのワークショップをしている。子どもたちが真剣に取り組む顔を見ることが好き」という。
表紙の砂絵については「担当者から飛騨の古い町並みを描いてほしいと言われた。本の内容も知らなかったので、タイトルの『黒白』を見て驚いた。砂絵を認めてもらい、『世に出た方がいい』と勧めていただけてありがたかった」と宮地さんは喜ぶ。
表紙の原画を含む作品が逗子市文化協会「文化祭美術展」で展示される。開催期間は10月29日~31日。会場は逗子文化プラザ(逗子市逗子)。