逗子市高齢者センターの風呂が7月1日、2年1カ月ぶりに再開し、待ちわびた利用者が次々に訪れた。ボイラーのほか、カラン、椅子、洗面器も新しくなった。
同センターは1983(昭和58)年、高齢者の生活相談や健康増進のための指導、機能回復訓練など、高齢化社会に対応する拠点として「老人福祉センター」の名称で開館した。
10年ほど前から老朽化が懸念されてきたが、2017(平成29)年、30年以上使用してきた風呂のボイラーが壊れた。すでに対応できる部品がないことや市の緊急財政措置により、浴場の廃止が発表された。
浴場再開に向け署名活動を始めた小林三千代さんは「一人暮らしの人や昼間は家族がいなくて一人ではお風呂に入れない人など、センターの風呂を頼っていた高齢者の皆さんが、お風呂が無くなることに対してどうしていいか分からずただただ困っていた。署名でも集めたらどうだろうという声があり、60代の私が動かなければと思って始めた」と当時を振り返る。
風呂で知り合った仲間5人ぐらいが中心になり、9月の議会に間に合うようにと8月の暑い中を一軒一軒歩いて回り、約2500筆を集めた。関係する委員会に所属する全議員を訪問し、思いを伝えた。その結果、陳情は採択された。
2018(平成30)年12月の市長選挙で風呂再開を公約に掲げた桐ケ谷覚市長が当選し、最初の議会で公約実現に向け、補正予算を組んだ。その後、特定防衛施設周辺整備調整交付金基金が活用できることになり、予定より早い再開となった。
再開当日、駆け付けた桐ケ谷市長は「2年間、お待たせした。悠々ライフを楽しんでほしい」と「ゆ」ののれんの前であいさつした。
11時のオープンと同時に入浴した今村尚枝さん、高橋妙子さん、福島弘子さんは署名活動をした仲間。「特別な温泉でもないが、広いせいか、家の風呂より温まり、体の痛みも解消される」「床も取り換えたと思えるほど、きれいになった気がした」と笑顔で話す。「高齢者にとって2年は長い。風呂を楽しみにしながら亡くなった方も数人いる」「一人では風呂に入れず、デイサービスを頼るようになった方もいる」と無念さもにじませたた。
食事施設「キッチンカモミール」のランチもあっという間に売り切れ、「久しぶりね」「元気だった?」という声が飛び交った。
60歳以上は無料で利用可能。風呂の利用時間は11時~15時30分。せっけん・シャンプー・タオル・ドライヤーは持参。