相模湾を望む海岸沿いに建つ「デニーズ葉山森戸店」(葉山町堀内)が1月31日18時、閉店した。
同店は1991年8月にオープン。テラス席からの眺望の良さや店オリジナルのモーニングメニューなどが評判で、観光客はもとより地域住民でにぎわっていた。
運営するセブン&アイ・フードシステムズ(東京都)の広報は「塩害による経年劣化が顕著で先にテラス席や一部、駐車場を立ち入り禁止にした。老朽化も一因だが、葉山森戸店のような景色のいい場所はなかなかなく、できれば旗艦店としても続けたかったが、諸般の事情により閉店となった」と話す。
店のスタッフは「閉店前2週間は一日中ずっと混んでいた。中でも29日30日は大変だった」と振り返る。最終日も約600人が来店した。
17時30分のラストオーダーに最後に間に合った葉山在住の母親は娘3人を連れて来店。「結婚して葉山に越してからよく来ていた。中学2年の長女が生まれる前だから15年前から」と話し、ぎりぎり入れたことを喜んだ。
間に合わず席に座れないことがわかっても入り口で残っていた地元の中学2年の女子生徒3人は「写真だけでも撮りたかった」「友達との誕生日会などもここだった」「フルーツいっぱいのデザートが大好きだった」と名残惜しんだ。
18時閉店の音楽が流れ、残っていた客が長い列を作り、順番に会計。店長の北雅英さんをはじめ、スタッフがお礼の言葉を1人ずつに掛けた。
最後に店を出てきたのは女性2人組。都内の仕事を半休して駆け付けた井上結葉さんは「いつもは飲まないワインを飲んだ。ここは亡くなった夫との思い出の場所。親切にしていただいたスタッフにもあいさつできてよかった。ここがなくなったらどこに行こう。葉デニロスに」と涙ぐむ。一緒に出てきたもう一人、逗子在住の作家、折原みとさんは「ここのテラスが私の仕事場だった。『幸福のパズル』はここ葉山と安曇野が舞台。小説の中にデニーズも出ている。これからどうしよう」と残念がった。
客が全て出ると、店内にはすぐに工事関係者が入った。「デニーズ」再開の予定はない。