葉山にある山口蓬春記念館(旧山口蓬春邸)の主屋と画室(がしつ)が11月18日、国有形文化財に登録されることが決まった。
文化審議会からの文部科学大臣答申を受け決定した。これで葉山町内にある国有形文化財の登録件数は9件となった。
同建物は葉山一色海岸北の丘陵に位置し、建築家・吉田五十八の見立てにより日本画家・山口蓬春が1948(昭和23)年に購入した。寄棟造(よせむねづくり)桟瓦葺(さんかわらぶき)の平屋建てで、南東隅を2階建てとし、南と東に張り出す茶の間棟・風呂棟は吉田の設計により増築した近代和風住宅。
画室は多くの著名な画家の画室設計を手がけた吉田の人生最後の近代数寄屋(すきや)画室建築。庭に面した大きな窓からは四季折々の草花や木々を見ることができる。山口は多くの作品をここで制作し、1965(昭和40)年に文化勲章を受けたほか、皇居新宮殿杉戸絵の「楓」に代表される数々の作品を残した。
1990(平成2)年、山口家より土地、建物および所蔵作品の寄贈を受けたJR東海生涯学習財団(現・公益財団法人JR東海生涯学習財団)では、その偉業を永く後世に伝えていくことを目的として、1991(平成3)年10月15日に山口蓬春記念館として開館した。
加藤慶輝館長は「主屋と画室の2つが同時に登録されたことは、建築物という面とそれを使った美術家両方の造形が評価されたものと思っている。2人の美の競演を多くの人にご覧いただけるよう、未来永劫(えいごう)、主屋と画室の維持管理を行い、後世に伝えていきたい」と話す。
同館では現在、秋季特別展「山口蓬春と皇室-現代へ続く蓬春レガシーの系譜-」を開催している。開催時間は9時30分~15時30分(入館は15時まで)。入館料は、一般=600円、高校生以下無料。11月27日まで。