葉山の出版舎「ハンカチーフ・ブックス」(葉山町一色)が10月16日、「共生の法則~大切なことはすべて腸内細菌が教えてくれた」(1,540円)を刊行する。
「共生の法則~大切なことはすべて腸内細菌が教えてくれた」の表紙(提供=ハンカチーフ・ブックス)
著者は2020年12月に亡くなった、腸内細菌学の研究で日本農学賞、日本学士院賞、旭日中綬章などを受賞した農学者、光岡知足(ともたり)さん。「善玉菌」「悪玉菌」などの名付け親でもあり、オリゴ糖など機能性食品の研究や開発に携わり、「バイオジェニックス」を提唱、日本ビフィズス菌センターの理事長なども務めた。
同書は2015(平成27)年に刊行した「大切なことはすべて腸内細菌から学んできた~人生を発酵させる生き方の哲学」を基に、編集者・長沼敬憲さんが何度も光岡さんにしたインタビューを増補した。
長沼さんはサイエンスライターでもあり、医療・健康・食・生命科学・ボディーワーク・歴史・哲学といった幅広いジャンルの書籍を企画・編集・執筆している。自身の著書「腸脳力」はロングセラーとなっている。「10年ほど前に最初に光岡さんとお会いして以来、腸内環境の話を通して研究者として、人としての生き方を聞いてきた。腸内で細菌は発酵したり腐敗したりしてバランスをとって環境を整えている。それは人の社会も同じようと話されていた」と長沼さん。本のタイトルに「共生」という言葉を使ったことについては、「共生とは排除しないということ。先生は自分と違う意見の人でも分け隔てなく受け入れていた。コロナ禍で考える一つのテーマかと思う」と話す。
表紙は、葉山の棚田で「冬期湛(たん)水・不耕起農法」による米作りを続ける音と絵のアーティスト、真砂秀朗さんの作品。土壌の微生物の力を大切にする真砂さんと思いが通じ合い、快く絵を提供してもらえたという。
10月3日は、出版プレイベントとして長沼さんと文化人類学者の辻信一さんによるトークイベント「腸内細菌から学ぶ「共生」の法則 ~ミクロとマクロの「あいだ」をつなぐ生き方とは?」をオンライン開催する。辻さんはスローライフを提唱し、「ナマケモノ倶楽部」を立ち上げた。大学の教授を退官後、世界各地を探求しようとした時に、コロナ禍となり、外出できず、ウイルスや微生物について研究するうちに長沼さんと出会う。長沼さんは「人間社会だけでなく、自然界や目に見えない微生物や菌たちとの共生、生き方、考え方などを辻さんと話せたら」と意気込む。
トークイベントの開催時間は20時~21時30分。参加費は一般=1,000円、学生=500円。本とのセット料金は一般=2,300円、学生=1,900円