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逗子の老舗写真館がリニューアル 「亀甲館」の名前を継ぎバー併設

(左から)新店主で写真家の佐野竜也さん、亀甲館2代目の母の写真を手にする家主の堀田陽一さん

(左から)新店主で写真家の佐野竜也さん、亀甲館2代目の母の写真を手にする家主の堀田陽一さん

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 逗子の銀座商店街で50年以上営業していた写真館「亀甲館」(逗子市逗子1、TEL080-5055-2592)が12月15日、約3年半ぶりにリニューアルオープンした。

壁をなくした店内。奥が「バー チキチータ」

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 家主の堀田陽一さんは「父の跡を継いだ母が2017(平成29)年5月に亡くなってから写真館として続けたいと思っていたが、私はまったく店を手伝ってこなかったので継いでくれる人を探すしかなかった」と話す。「今回の改装工事で1950(昭和25)年の新聞が出てきたので、戦後、ここで父が始めたことが分かったが、それ以前に別の場所で写真館をやっていたかどうかも聞いたことがない。ただ、なぎさホテルでの撮影の仕事もしていたので、夏目雅子さんがお忍びで来た時に撮影を頼まれたという話も聞いた。父が早くに亡くなったので、母は見よう見まねで一生懸命店をやっていた。母の人柄か、母に変わってからの方が繁盛していたように思える」と振り返る。

 リニューアルして新しい店主になった写真家の佐野竜也さんは、2009(平成21)年に「逗子海岸映画祭」を立ち上げたクリエーター集団「シネマキャラバン」のメンバー。「横浜の写真館で仕事をしていたことがある。結婚した時に記念写真を撮った夫婦が60年ぶりにまた訪れるような老舗だった。その店が70年目に閉店した悲しさを味わったこともあり、陽一さんの店を残したい気持ちや、亀甲館という名前を残すという条件も理解できた」と話す。

 内装は壁をすべて取り払い、ギャラリーとしても利用できるようにした。「おしゃれなハウススタジオで何十枚も撮って選んでもらうのではなく、1枚1枚ポーズを決めて撮る昔ながらのスタイル。インクジェットではない焼き付けでプリントする。逗子の駅前にその技術でプリントしてくれる人がいる。地域のつながりを大切にしたい」と佐野さん。

 店の奥で4畳半の和室だった休憩スペースは「バー チキチータ」にしつらえた。席数はカウンター席4席。佐野さんの仲間の縁から手に入りにくいといわれる銘柄のジン、アブサン、パトロン(以上1,200円)をはじめ、ハイボール、緑茶ハイ、レモンサワー(以上600円)、瓶ビール(700円)などアルコール類と、コーラ、ジンジャーエールなどソフトドリンク(以上500円)を販売する。準備が整えばペルー料理などを提供する予定という。

 佐野さんは「最初、飲食は反対されたが、写真館だけで経営していくことの難しさも理解してもらった。町の人が集まる場所になれば」と話す。

 リニューアルオープン日が偶然父の誕生日だったという堀田さんは「愛着のある逗子の商店街から老舗が次々になくなっていくことが本当に残念。こうして店を残すことが、自分で継げなかったせめてもの罪滅ぼし。店前を通る人に『亀甲館が残ってうれしい』と言ってもらえることも多く、よかったと思える」と笑みがこぼれる。

 営業時間は、写真館=10時~18時、バー=19時~23時。

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