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建築家・遠藤新が手掛けた葉山の「加地邸」で民泊事業 建物を残すために

オーナーの武井雅子さん。テラスで

オーナーの武井雅子さん。テラスで

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 葉山の御用邸に程近い山の中腹にたたずむ「旧加地邸」(葉山町一色)の修繕が終わり、10月、民白事業が始まる。

相模湾も望める展覧室

 旧加地邸は、三井物産初代ロンドン支店長を務めた加地俊夫さんの別邸として、米の建築家フランク・ロイド・ライトの弟子、遠藤新が設計し、1928(昭和3)年に完工。91年がたつ。葉山町によると、アプローチ、玄関など大谷石を多用し、水平に大きく伸びる軒など、ライトのスタイルをくんだ秀作で、現存する遠藤の住宅作品の中でも重要な作品の一つという。

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 テラス、サンルームを有する居間、東西の中2階にギャラリーを備え、寝室・客室・書斎のほか、撞球室もあり、展覧室からは相模湾を眺望できる。家具や照明器具は、全てがこの別荘のために設計され、ほぼ保存されている。木造一部鉄筋コンクリート造2階一部地下1階建て、銅板葺き、建築面積297平方メートル。

 加地さんの孫が個人の民家として引継ぎ、建物を残す動きは地元の有志に委ねられてきた。

 2016(平成28)年に不動産契約をし、オーナーになった武井雅子さんは知人の紹介で、前年夏、初めて夫婦で本物件を訪れた。「時間が止まっているように感じられるほど、昭和初期のまま残っていて驚いた。あらためてライトや遠藤新について調べると、さらにこの建物を残すことの重要さを感じた」と振り返り、「引き継ぐに当たり、加地さんから特に要望などはなかったが、このように変えずに、大切に保存されてきたこの状態が加地さんの思いだと受け止めた」と話す。祖父が建てた築50年の川崎の本社ビルもリノベーションして新しく動き出していた。

 武井さんは利活用していくために地域で支えてきた人や専門家と相談するが、一時は用途地域の関係で断念することも考える。2018(平成30)年に施行された民泊新法(住宅宿泊事業法)により、方向性が見えてきたという。「保存にはどうしてもマネタイズする方法が必要。下水などインフラの整備をするためにクラウドファンディングもした。民泊の一棟施設貸し料金も安くはできない。オープンを前にしても悩んでいる」と武井さん。一棟施設貸し料金は2泊42万9,000円~7泊63万630円(定員6人)。

 民白利用180日以外の利用については検討中。武井さんは「この建物をつないでいきたいとう思いに共感してくださる方に知っていただきたいし、利用いただきたい。子どもたちにも重いドアや網戸などに触れてもらって、日本が現代のように便利になる前の生活を体で感じてもらいたい」と話す。