インド藍の工房「indigo55葉山ベース」の野村敏明さんが通常、かばんや小物製造に使う布でマスクを作り、手に入らず困っている人に3月16日から無料で提供している。
インド藍の工房「indigo55葉山ベース」で仕事中の野村敏明さん
新型コロナウイルスの感染が日本でも確認され始めた頃、友人たちからマスクを作ってほしいという声をもらっていた野村さんは「その頃はまだ甘く考えていた。今月に入り、医療現場にマスクを優先的に回すという国の発言を聞いて、これは本当にマスクが手に入らなくなると考え、作り方を調べ、必要な材料をネット注文した。仕事の合間に約80枚作ってみた」と話す。「マスクフィルターも、耳にかける幅の広いゴムひももさらしももう手に入らない。あと100個くらいしか作れない」とも。
野村さんは東日本大震災の時に年に数回、物資支援などのボランティアで現地に行き、そこでの経験を踏まえて今回は無料提供にしたと言う。「物が足りなくなると、お金が無くて本当に困っている人に必要な物が届かなくなる。それで条件を付けたくなかった。例えば、親が仕事で留守番している子ども呼んで、自分の子どもと一緒にご飯を食べさせた時、お金を取らないことと一緒。できることを探して自分のキャパでやればいい」と話す。
マスクのサイズは大中小と用意し、小は子ども用。構造は表の布、マスクフィルター、さらしが2重と4層構造になっている。マスク上部にアルミ板を入れ、鼻に当たらないように工夫している。ひだの幅も顔の構造に合わせて5ミリ単位で変えた。「無料と言っても、八百屋さんが腐った野菜を渡したりはしない、それと同じ。縫製を仕事としている自分が商品にならないような物は作らない。ただ、医療用のマスクではないのでそれと同じ効果があると思わないで」と野村さん。
店のフェイスブックにはマスク提供について、「お願い」と「マスクの仕様」が記載され、「内容を理解・了承してくれた方々へのみ、お渡しします」とある。フェイスブックを読んで、美容室や病院に勤める人も受け取りに来たと言う。「もしタダでは受け取りにくいという人がいたら、マスク作り用に布を切ってくれるなど手伝いをしてもらえたらそれでいい。今、自分ができることがこれだっただけ。マスクを作る技も増えたし、いい機会になったと思えば」と笑顔を見せる。