国指定史跡「長柄(ながえ)桜山古墳群第1号墳」(逗子市桜山7、葉山町長柄字芳ヶ久保)の保護・整備工事が3月に完了し、オープニングセレモニーが4月20日、逗子市制70周年・葉山町制100周年記念行事として行われた。
同古墳は1999(平成11)年、葉山町在住だった考古愛好家・故東家洋之助さんが桜山丘陵で1号墳を発見。現存する県内の古墳では最大級の前方後円墳。2基で構成される古墳群は4世紀代に築造されたという。
逗子市と葉山町は文化遺産を後世に伝え残していくために2002(平成14)年、国史跡指定を受けた後、指定地を公有化、2006(平成18)年~2009(平成21)年にかけて発掘調査を実施。2011(平成23)年、整備基本計画を策定後、樹木を伐採、整理し、2014(平成26)年から整備工事が始まった。
墳丘の崩壊を保護するために盛土を行い、コグマササを植栽し、頂上への階段を設え、木の棺(ひつぎ)の埋設場所の表示や埴輪のレプリカ、説明板や案内板を設置した。整備費用は文化庁が半分、3分の1を神奈川県、残りを逗子市と葉山町が負担した。
セレモニーであいさつした桐ケ谷覚逗子市長は「墳丘から見渡す逗子湾の景色は、1600年前にこの地を選んだ先人も同じように見たのだろうかと歴史に思いを馳せることができる。逗子市としてこの地域一帯の利活用を含め、整備をし、守っていきたい」と話し、山梨崇仁葉山町長は「馬もいたかどうかという時代に人の手だけでこのような大きなお墓を作り、ここで眠りについたのかと思うと古代へのロマンを感じる。人が安らぐ場所として将来に受け継いでいきましょう」と呼びかけた。
古墳という史跡のため、トイレもごみ箱も飲料水も設置はされない。
県の要請もあり、故東家さんを中心に市民町民の有志が集まって結成した「古墳パトロール隊」を母体に、2000(平成12)年、「長柄・桜山古墳をまもる会」が作られた。会長の濵野八十一さんはセレモニーのテープカットにも参加し、「一人でも多くの人に来てもらい、後世に守り続けていってもらえたら」と笑顔を見せ、「来週予定している古墳見学会もすでに両日とも50人の定員がいっぱいで、多くの人が関心を持ってくれていることが分かり、うれしい」とも。
これまで、市内・町内の小学6年生など多くの団体・グループに見学ガイドをしてきた同会に、日時によってはガイドを依頼できる。
セレモニーを見守っていた100人以上の市民町民は、古墳の上まで登り、市の担当者の解説を聞いたり、写真を撮ったりしながら見学した。一人で学校から歩いてきたという地元・逗子開成高校1年生は「逗子全体をこうして見渡したことはなく、海で練習中のヨット部の生徒も良く見えた。古墳のことも関心がある」と話す。
逗子市側からは蘆花(ろか)記念公園(桜山8)や六代御前の墓(桜山8)、葉山側からは葉桜団地の西端に、長柄交差点手前の桜山トンネル脇に登り口がある。