洋菓子製造販売「ガトー・ド・ボワイヤージュ」(横浜市中区)が9月21日、葉山町に5年間保存可能な非常食「防災スイーツ」2000袋を寄贈し、山梨崇仁町長から同社会長、吉田三喜雄さんに感謝状が手渡された。
防災スイーツは2011(平成23)年の東日本大震災をきっかけに、2019年9月に完成した焼き菓子ガレット。吉田さんは「大震災の時に、飲料やおにぎり、カップ麺が売れていく中、お菓子が売れ残っていて、被災地ではお菓子の出番はないのかと思ったが、店の商品を被災している皆さんに届けたら、とても喜ばれ、災害時に役立つスイーツの開発を始めた」と振り返る。「防災スイーツが完成した直後に発生した台風で大きな被害を受けた千葉県館山市に寄贈したところ、喜んでいる大勢の中で小麦粉や卵などのアレルギーがあり食べられずに悲しむ子どもたちがいることを知り、胸が痛んだ。約1年かけてアレルゲンフリーの商品を作った。誰でもが安心して食べられるスイーツになった」と話す。
今回寄贈された半分の1000袋は、アレルギー特定原材料等 28 品目を使っていない商品。宇宙空間でのスイーツとしても候補になっているという。試食をした総務部防災安全課の奥泉崇幸さんは「アレルゲンーフリーの商品も、そうでない商品と同様に香ばしく食べやすかった」と喜ぶ。
葉山在住の吉田さんは「私の祖父、門林弥太郎は東京・両国の菓子問屋で修業し、銀座風月堂の職長としてシュークリームやスイートポテトを世に出している。明治の食糧難の時代に芋のつるをかじる子どもたちを見てスイートポテトを考案したと聞いている。世の中に必要とされるものを作らなければいけないと祖父から教えられた。この防災スイーツも、その思いを受け継いでいる。生まれ育った葉山町に貢献できれば」と力を込める。
「これまで災害の際の備蓄品の中にスイーツはなかった。寄贈いただき感謝したい。袋に災害用伝言ダイヤルの番号を記載し、食べ終わった後の袋が水筒の代用になるなど、防災の現場で必要なことも考えられている。町として大切に使わせていただく」と山梨町長。
町は指定避難所の災害用非常食として備蓄するほか、10月14日・15日に開催する葉山町総合防災訓練で来場者に配布する。