市民活動団体「ユニバーサル絵本ライブラリーUniLeaf(ユニリーフ)」(葉山町一色)が現在、建長寺(鎌倉市)境内にある仏殿を再現したブロンズ模型を屋外設置するプロジェクトに取り組んでいる。
設置予定の建長寺本殿前で模型を披露する建長寺内務部長(提供=大下利栄子さん)
透明点字シート付き絵本の製作・貸し出し事業を展開する同団体。代表の大下利栄子さんは「2歳で視力を失った娘と旅行しても、その場でどのような建物かを共有することが難しいと感じていた。8年前、ポルトガルを訪れたい際に世界遺産ベレンの塔の前で初めてブロンズの模型を見て、こういうブロンズのミニチュアがあれば視覚障がい者とその場で感動を共有できると思った」と話す。
利栄子さんは「視覚障がい者向けの歴史的建造物ミニチュアブロンズ模型の発祥はドイツ。ヨーロッパには観光地や街並みをかたどったミニチュアブロンズ模型が約120個ある」と話す。「(ミニチュアブロンズ模型は)視覚障がい者のための特別な物ではなく、誰もが触れることで実物を見ただけでは気が付かないことに気付き、建物の理解を深めることができるのでは」とも。
「日本では、模型があっても、分かりにくい場所に置いてあったり、視覚障がい者が『触れたい』と言わないと触れることができなかったりして、屋外に設置している所は少ないように感じる。実際の建物の前に設置することで、障がいがある人とない人が一緒に感動を共有できる。障がいがある人が触れている様子を見て、障がいがない人も一緒に触れてほしい」と利栄子さん。
娘の歩さんは京都の三十三間堂に親子で訪れた際、建物内の順路の途中に置いてあった本堂の模型に触れ、本堂の内陣の柱間が35あることに気付き、なぜ33ではなく、35なのかと寺院の職員に聞いたという。「目で見ているだけでは気が付かない。触れることで確認できることがあると実感した」と利栄子さん。
現在、屋外設置プロジェクトのアドバイザーを務める歩さんは「建長寺では今まで広さや境内の空気などを感じていたが、建物のことは分からなかった。大まかな形だけでも知りたいと思っていたが、紙の模型に触れたら、もっと細かなところまで知りたいと思うようになった」と話す。
同プロジェクトでは今後、クラウドファンディングで資金を集め、来年夏の模型完成を目指すという。11月27日は賛同を呼びかける取り組みの一環として、「MUJIcom.ホテルメトロポリタン鎌倉」1階でイベント「体験しよう~♪ 視覚に頼らない豊かな世界」を開く。当日は、歩さんが一人で旅行したコスタリカで、視覚に頼らず見てきたユニバーサル事情などを話す。開催時間は13時30分~15時。歩さんのトークは14時~14時20分(予約優先)。入場無料。
利栄子さんは「視覚障がい者が触れられるミニチュア模型を必要としていることを知らない人が多い。ブロンズ像は増やしていきたいが、プロジェクトではミニチュアを作ることだけでなく、視覚障がい者への理解も深めていきたい」と力を込める。