葉山町立一色小学校4年生の児童約90人が12月23日、海草「アマモ」の種を植える授業を行った。
種を植えたポットをプール脇に設置した専用水槽に運び、各クラスの代表が静かに沈めた。
地元の漁業者によると、魚のすみかや産卵場として重要なアマモ場はかつて葉山の海に豊富にあったが、1990年代から減少し、近年でほほ消滅しているという。同町の海岸の水域環境保全・再生研究のため1984(昭和59)年、鹿島建設が葉山町一色に開設した「葉山水域環境実験場」では2004(平成16)年からアマモ場再生の研究に取り組んでいる。研究活動の一環として2006(平成18)年には、地元の漁業者やダイバー、漁業協同組合と共同で「葉山アマモ協議会」を設立した。
同協議会参画団体の一色小学校では15年前から、4年生児童がアマモを通して地域の環境を学び、アマモの種苗つくりをしている。今年も「葉山水域環境実験場」の山木克則さんと同校の卒業生でもある中村華子さんがアマモの生態などについての授業を行った。
山木さんは授業で、「海のゆりかご」と呼ばれるアマモ場の役割やそのアマモ場が衰退していること、そのためにサザエやアワビ、タコなどの漁獲量が減っていることなどを説明したほか、再生活動が地域の協働作業で行われていること、山・川・海のつながりが重要ということを伝えた。
児童たちは、一人1つずつ、自然にかえる育成用ポットの中に砂を入れ、アマモの種を5粒ずつピンセットで植えた。「日本料理店『日影茶屋』(葉山町堀内)が自店の生ゴミと一緒に海で駆除したウニを業務用生ゴミ処理機で堆肥にし、砂の中に混ぜている」との話を聞いた児童からは「ウニを肥料にするなんて驚いた」という発言があり、砂の中にトゲがないかと注意深く探す児童たちもいた。ウニ堆肥の利用は今年が初めてという。
種を植えたポットはプール脇に設置した専用水槽に運び、各クラスの代表が真水に沈めた。真水で刺激することで発芽を促すという。ポットは約4時間後、自然海水を入れた隣の水槽に移された。
山木さんによると、1月中旬にはポットにアマモの白い胚軸が見られ、2月中旬から3月にかけ緑の子葉が育ち、翌年4月には花が咲き、6月に種が採れるという。気温が上がる前に、アマモの苗は実験場に移動し、海の水温が下がる11月ごろ葉山の海底の砂地にダイバーが植える予定。
長年、この活動を見守ってきた校長の安達禎崇さんは「自分たちが暮らす地域の自然環境のことを知って、葉山に愛着を持ち、大切に思ってほしい」と話す。山木さんは「全国でもこれだけ長く、アマモ場の活動を続けている学校はここしかない。環境を守るために今、自分ができることを考えるきっかけになれば」と期待を寄せる。