逗子市社会福祉協議会(逗子市桜山5)で毎月2回開かれている「健康麻雀ポンポン倶楽部」には毎回50人以上の市民が集まる。その成り立ちと魅力について、代表の長谷川静さんに話を聞いた。
――長谷川さんがマージャンと出合ったのはいつですか?
家庭マージャンからです。45歳の時、アメリカ滞在から帰国して夫と一緒に楽しむこともなくなりかけていたころ、近所に南アフリカ駐在から帰国した夫妻がいらっしゃって、マージャンに誘ってくださって夫婦で家に伺いました。その時が初めのマージャンで、大三元を振りました。それがすごく悔しかった。これは負けられないと、本を2冊買ってきて読破しました。
近所に海外生活を経験した同じような境遇の方が結構いたので、夫婦単位でお邪魔しては家でマージャンをやるみたいなことを1年間、ビッチリやりました。
その後、逗子に引っ越してきました。逗子でもマージャンをやりたかったので、自宅に掘りごたつを作って環境を整え、近所に声を掛けたが成立しませんでした.
日本では夫婦が一緒に行動するという習慣があまり無かったのですね。前に住んでいた所の夫婦は海外で暮らしていた経験から「夫婦一緒」が普通のことでした。掘りごたつを使ったのは1~2回でした。
―――そこで、マージャンとの縁が切れてしまわなかったのですね
そうなんです。それから仕事で北海道に越したのですが、そこにマージャンの会がありました。健康マージャンの会です。200人位の会員がいました。その会に入ったら、もう水を得た魚ですよ(笑)。「ねんりんピック大会」が北海道であった時には見学させてもらったりしました。北海道にいた13年間、バッチリはまり込んでしまいました。
―――健康マージャンを経験したのは北海道だったのですね。
毎月の定例会、市内の大会や全道大会などに顔を出していましたね。
健康マージャンに参加していたのは、ほとんど女性です。マージャンを勉強するクラスがあって、そこに来る初心者の人は仕事をリタイアした女性が多かったですね。仕事一筋できた人、結婚しなかった人もいて、ひとりぼっちなんですよね、リタイアすると地域で。何か仲間とやりたいと思っても60歳になってから地域活動に入っていくのは、なかなか敷居が高いというのかな。でも、マージャンだったら自然と仲間ができる。
男性はあまり来ませんでした。健康マージャンは、やはり街の雀荘(じゃんそう)でやってきたマージャンと違う。男の人たちで仕事が終わった後にやるマージャンとも違う。違うことが受け入れにくかったのかもしれません。雀荘のマージャンと基本的に違うと私は思いますけどね。
―――健康マージャンは、「飲まない」「吸わない」「賭けない」。これが原則ですね。
雀荘のマージャンの逆ですよ。雀荘では、「飲みます」「吸います」「賭けます」だったでしょうから、男の人にとってみると「何だ、こんなのやれるかよ」と。学校卒業した人たちに、もう一回、教室で勉強しましょう、みたいな感じに思えたのかもしれません。
―――北海道から逗子に戻られた?
はい。戻って来ました。健康マージャンとかの形にこだわらず、自分がマージャンを楽しみたいという素直な思いがありました。ですが、これまた第1回の失敗と同じでした。なかなか人が集まらない。そこで自宅の近くにある高齢者の地域サロンで始めました。認知症の男性がいて、その方がマージャン大好き。その人を中心にマージャンをやろうということになって…。ところがその方が去年秋に亡くなってしまいました。
そこで認知症予防にとオレンジ・カフェにも声を掛けてみました。予防もありますが、認知症になってもそれ以上進ませないためには少し脳トレをした方がいいとマージャンの効能を私が主張して始めました。そこに社会福祉協議会(社協)の職員、服部誠さんが声を掛けてくださった。社協の健康づくりプログラムでやりませんか?と。「まあ、チャンス~」と思いました。
服部さんがお膳立てをしてくださって場所を貸してくれる、道具を用意してくれる。あとは私たちが社協の会場に行って、健康マージャンの会を進めるだけでいいということになったのです。オレンジ・カフェに来ている人たちに「一緒にやりませんか?」と声を掛けました。それが2017年11月です。
―――スタッフがよく集まりましたね。
いろいろな活動をさせていただいていますが、出会った人たちに片っ端から声を掛けることにしています。マージャンでつながっていた人たちでもありません。どちらかというと高齢者のために、自分たちがもう高齢者ですけど…地域で安心して暮らせるような状況をつくっていこうと考えている人たちに声を掛けます。
私が地域で何かを始めようと言って、自分一人でシャカリキになっていたのではだめです。やっぱり人とのつながりが根っこにあってこそ、活動が育まれていくと思いますね。
―――ルールつくりなど、スタートするための苦労があったのではないですか。
スタートはどうしようかとなった時、まず聞きに行こうということになりました。小坪の大谷戸会館では既に健康マージャンを始めていて、多分そこが逗子で一番早く始めたところではないかと。そこに行きました。ルールやら、やり方やら全部聞いて、これでいきましょう、ということになりました。
最初は8卓を用意してくださった。8卓ということは4×8で32人。32人も集まらないだろう、まぁ20人来ればいいところかしらと思っていたら、とんでもない数の人たちが来ちゃって…。来ちゃってなんて、失礼ですよね。来てくださって、もう、座りきれない。卓が足りない、というところからの始まりでした。
―――どうしてそんなに集まったのでしょう。
どうしてでしょうね。一つは、マージャンというゲームの素晴らしさだと思います。私は世の中にあるゲームでこれほどすごいゲーム、これほど楽しめるゲームはないと思っています。まず楽しいということだと思います。
それから、500万人位の認知症の方がいるといわれていますが、その脅威がひしひしと高齢者の中に近づいている。家で安穏としていると、いや、こりゃ駄目だと思うようになる。周りの人からも「家で一人でこんなことしていちゃ駄目だよ」「一歩出て何かしてみましょうよ」と誘われるようになります。そこにマージャンがあった。初めてやるゲームとしては、ハードルの高さはあるけれど、それを越えても余りある価値を認めて来る人たちがいますね。
3つ目は、参加した人から「やりやすい」って言われる雰囲気かな。教える先生たちが一生懸命ですね。参加者が楽しめるために努力をしましょうという献身的なサポートをしていることだと思います。
最初は初心者でもベテランでもみんな一緒にやっていました。今は、別に初心者クラスの会を作っています。昨年11月に初心者だった人たちが半年たったらもう卓を囲んでいるという姿には感動を覚えます。
―――定員いっぱいになって、できないということもありますか?
今は整理券を配っていて、60人になるとそこで一応受け付けは終わりなんです。ここのところ50人前後で定着しています。
参加者が減ってしまわないよう、ここから先どのように会を運営していくか考えています。ゲームの結果は記録していますが、モチベーションがない。ただ楽しいだけではなく、やる気を起こしてもらうにはどうしたいいのかと思っています。
そこで一つは「ねんりんピック」への参加を考えています。スポーツだけでなく文化交流というのがあって2007年から健康マージャンが正式種目として入っています。都道府県大会で優勝した人たちが「ねんりんピック」の大会に出られるわけで、来年の大会に間に合うかどうか分からないけれど、予選大会を逗子でやろうと思っているんです。思っているって生意気かな、やりたいくらいにしておこうかな。毎年ありますからいつか出られるんじゃないかという思いにつながればいいですね。
逗子にはいくつかの団体があります。その方たちと一緒に逗子市大会をする。つながっていく、みんなで広げていこうと提示していかれたらいいですね。葉山でも仲間が健康マージャン、ロンロン倶楽部を作りました。こちらは「ポンポン倶楽部」で葉山は「ロンロン倶楽部」。2卓で始まりました。葉山にも健康マージャンの灯がともったような感じです。
―――健康マージャンの健康とは何かを追求していると聞きましたが。
医科大学の先生方が、認知症予防ということでは良いゲームだよ、大いににやりなさい、と推奨してくれていることが一つ。そういう意味での健康もありますが、4人で座っているという長時間の活動の中には使わない体の部分がある。そこで、伸びをしたり、いわゆる5分間体操のようなものを入れたりと考えています。例えば、インフルエンザがはやっている時はマスクや手の消毒が必要と呼び掛けています。なかなか強くは言えないこともありますが…。
―――サポートしている社協との関係はどうですか。
やってもらうというのではなく、おんぶに抱っこではだめだと思っています。「自立コラボ」がいいのかなと。「自立したコラボレーション」です。相互が自立しているからこそのコラボレーションです。自分たちができないから助けてよ、ではコラボにはならない。そういう意味で社協さんとの関係も、常に対峙(たいじ)している関係でありたいなと。対等な立場、協力し合える立場、仲間で言い合える関係がいいのではないでしょうか。
―――最後に、今、ご主人とマージャンはされるのですか?
いいえ、一切やりません。夫は健康野球です。いわゆる高齢者の還暦野球と古希野球の4つのチームに入っています。関東大会とかも行っています。この間行って負けてきたって言っていたかな。年寄りがね、少年みたいでかっこいいですよ。
「健康マージャンぽんぽん倶楽部」は毎月第1・3月曜の12時30分~。
逗子市社会福祉協議会 http://zushi-shakyo.com/
インタビュー 伊藤弘道(逗子市社会福祉協議会)+逗子葉山経済新聞