葉山の私立幼稚園「明照幼稚園」(葉山町堀内)が10月6日、国内外で活躍するピアニスト若林顕さんを招き、園児たちのために演奏会を開いた。
1955(昭和30)年創立の同園の園長、杉田雅美さんが東京芸術大学の同級生という縁で若林さんを初めて招いた。「5年ほど前まで園長をしていた母も音楽が好きで、若林さんをとても応援し、一緒にコンサートも聴きに行っていた。20歳でブゾーニ国際ピアノコンクール第2位となるほど、同級生の中でも別格だった」と杉田さん。
オルガンから始めた若林さんは7歳からピアノを習う。22歳でエリーザベト王妃国際コンクール第2位となり、ザルツブルク・モーツァルテウム音楽院、ベルリン芸術大学で学ぶ。国内外の多数のオーケストラと共演し、2002(平成14)年にはニューヨーク・カーネギーホールでリサイタルデビューを果たし、その後も第一線で活躍している。
演奏会は、年少・年中組と年長組の2回に分けて、40分間ずつホールで行われた。モーツァルトの「メヌエット」から始まり、ベートーベン、ショパン、リスト、チャイコフスキーの「ムーンリバー」までクラシックの曲が続いた。最後まで微動だにせずじっと聴く園児、グランドピアノの大きな音に驚く園児、「この歌知っている」と反応する園児など、それぞれに鑑賞していた。年長組は1曲ずつ、ピアノの回りから演奏する若林さんの手元をのぞき込むという貴重な体験もした。
「子どもたちに聴いてもらうことはとても大切な活動だと考えて、コンサートのプレイベントなどで行っている。おしゃべりしていても演奏が心に残っている子もいる。私は真剣に弾くだけ」と若林さん。「中学1年の時に東京文化会館で聴いたリヒテルのシューベルトのソナタの演奏が、ピアニストを志すきっかけ。聴いているうちに異次元にいるような感覚になって、拍手の音で現実に引き戻されたほど。知識がないうちの方が演奏に飲み込まれていくこともある」と続ける。
杉田園長は「生の演奏に触れることは子どもにとって大事なことだと考えている。演奏会は年に数回行っている。コロナ禍でなければ地域の皆さんにも参加してもらっていたので、状況を見ながら地域の方々にも声掛けしていきたい」と話す。