
逗子在住の金剛流能楽師、熊谷伸一さん・眞知子さん夫婦が10月25日、「能舞・能笛コンサート」を逗子文化プラザさざなみホール(逗子市逗子4)で開く。主催は逗子アートフェスティバル実行委員会と眞知子さん。
昨年、自宅の庭で舞を紹介する眞知子さん(提供=逗子アートフェスティバル)
会社のクラブ活動から能を始めた伸一さんだが、金剛流で本格的に稽古を重ね、免許皆伝。能楽協会に所属し、30年以上、師範として活動。10月19日に自宅の庭で行われたワークショップで伸一さんは「能は長い伝統があるためユネスコでも文化遺産に認められ、すごい芸能と思われているが、実は難しくて本当に意味するところが分かりにくい。表面的な言葉は現代語に訳すると分かった気になるが、感動につながるような表現は飛躍が必要。分からない世界を能では幽玄というが、暗くて遠くてモヤモヤして分かったような分からないような世界のことで、そこが私は好き」と紹介。
伸一さんと同郷で宮城県出身の眞知子さんは「学校の行き帰りに謡をよく耳にしていたので、なじみがあった。テレビで赤尾さんの演奏を聴いて習いたいと思い、能管を買おうとしたほど」だったが、実際はモダンダンスやジャズダンスを続けていたという。「能を始めたのは結婚後、夫の師匠が舞う『卒都婆(そとば)小町』を見た時に背中を押された」と振り返る。
2人は「金剛流久良岐会」を主催し、2023年に国立能楽堂で30周年記念会を開催。国立能楽堂のほか、横浜や名古屋の能楽堂の舞台に毎年1~2回、出演している。
逗子アートフェスティバルへの参加は2回目。伸一さんが手入れをする庭を見に来た人からのつながりで実現した。「逗子で長年暮らしてきたので、地域に能の何かしらを残せたら」と眞知子さん。25日のコンサートでは弟子たちの協力を得て、能笛「下り端(さがりは)」、素謡「西王母(せいおうぼ)」、能舞「羽衣」、仕舞「笹之段」などを披露する。伸一さんは仕舞の地謡(実盛と求塚)、羽衣の装束付けを、膝を痛めている眞知子さんは「西王母」「笹之段」「羽衣」の地謡を担当する。
眞知子さんは「能は動きが少ないという印象だと思うが、金剛流はみやびであでやかさがある。動かない時にこそエネルギーをためて、実は出し続けている。そのようなことにも身近なホールで触れていただけたら」と鑑賞を呼びかける。
上演時間は13時30分~15時。入場無料。先着100人。