
逗子の工房「ケージー工房」(逗子市新宿2)の木彫り作家、鈴木啓仁さんが10月15日、来年の干支(えと)「午(うま)」のネット販売を始めた。
逗子商工会の認定事業「逗子の暮らしセレクション」でも選定されている同工房作家の鈴木さんは都内の出版社務めを経て、2021年、「木彫り家」としてスタートした。「50歳を目前にコロナ禍で自分の本当にしたかったことは何だろうと考える時間があった。小さい頃からものづくりが好きで、そういう仕事ができたらいいかもしれないと思うようになり、周辺の人たちにつぶやいていた」と鈴木さん。
2021年3月に退社する際、同僚らから彫刻刀2本をプレゼントされ、5月にはテレビ番組「情熱大陸」を見て動物彫刻家・はしもとみおさんに刺激される。さらに知人の母親が使っていたという鎌倉彫の彫刻刀90本も譲られた。バードカービングなど気になる木彫りを調べていくうちに国産の木材を扱っている問屋も見つけることができ、11月にはハンドメードクリエーターの販売サイトに出品する。「一つ一つ、工房を始める環境が整った」と振り返り、「購入してくれた人がネット上に書いてくれる喜びの感想が素直にうれしいし、続けていこうと思える」と鈴木さん。
手のひらサイズを基本に、豚やカバなど丸みのある作品が特徴。干支は昨年の「巳(み)」で始めた。「自分らしさを踏まえて干支の動物を形にすることは難しい。ただ母親が午年なので、今年は早くから取り組んだ」という鈴木さんの作品の大きなこだわりは「使える置物」。飾るだけでなく、ペン立て、ようじ入れ、スマホスタンドなどとして使えることが特徴。「午」も背中に俵を背負っているが、正月飾りの後、俵を外すとペン立てになり、磁石の付いた俵はマグネットとして使える。付属の台を購入すれば、スマホスタンドにもなる。
逗子海岸を望む工房では日が昇り沈むまでが作業時間。鈴木さんは「彫る際に電気のライトと太陽光では光の当たり方が違う。国産の天然木(シナ)から切り出すのに約半日、ニスを塗り、一晩置いて、もう一度ニスを塗る」と説明。「生まれた干支を希望する人もいるので、残りの干支も早めに作る予定。愛犬愛猫の写真からオーダーメードで作り喜ばれることも多い。地元・逗子にちなんだものも手がけていきたい」と力を込める。
ペン立て使用の午のサイズは、高さ=約7.5センチ、幅=約4.5センチ×6センチ。価格は2,700円。