
音や声を出さず、聴覚障害者の日常を体験するイベント「音のないフェスティバル」が9月15日、逗子文化プラザ(逗子市逗子4)フェスティバルパークで開催される。
4回目となる同イベントでは、音のないフラダンスや手話による絵本語り、手話教室のほか、スタンプラリーや鉄道模型展示走行などを行う。今年は11月開催の「デフリンピック」に出場する葉山在住の射撃選手・永田英司さんと相模原在住の陸上選手・佐藤湊さんの講演会も予定する。
7歳で失聴した実行委員長の黒崎信幸さん(葉山在住)は逗葉ろうあ協会会長、全日本ろうあ連盟参与で、全国手話研修センター前理事長などを歴任し、長年、全国のろうあ者の権利を守り、ろうあ者の生活向上、就職拡大、法律の改正・撤廃などの活動に取り組んできた。同イベントのきっかけも、「手話言語条例を知ってもらいたかったから」だという。この条例は8月現在、40都道府県、600以上の区市町村で制定・施行されているが、神奈川県内で制定している市町村は一つもない。
1940(昭和15)年生まれの黒崎さんは「失聴した当時はまだ昭和20年代、原因も分からず、母は亡くなる前の父の『全財産を使ってでも聞こえるように』という願いを心に留め、全国の病院を連れて回ったが、分からなかった。聞こえないが話せるので、ろう学校にも入学させてもらえなかった。20歳の頃、葉山に越し、逗子の岡村家具で職人として働いた。社長が難聴ということもあり、理解があり、26歳の時、全国の青年が京都に集まる会にも参加させてくれた。その会を機に手話を覚え、さまざまな活動が始まった」と振り返る。
黒崎さんは「聴覚障害者は音のある日常で障害者と言われるが、音のない日常でコミュニケーションが取れなくなるのは普段、聞こえる皆さん。手話通訳者がいないと困るのは普段、聞こえる人たちになり、どちらが障害者といえるのか」と投げかけ、「こういう体験ができるイベントは恐らくここだけ。身ぶり、筆談、手話で楽しみながら私たちの日常を体験し、理解する機会にしてもらえたら」と参加を呼びかける。
開催時間は10時~15時。参加無料。